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伝説 琴川物語 
甲信分ける奥秩父の連峰、名峰のひとつに国師ケ岳がある。その尾根から湧き出る泉がせせらぎとなり岩肌を洗い渓流となる。その渓流に世にもまれな天性の美女が独り住んでおり人々はこと姫と呼んだ。この美女は父が琴の奏者で金峰山と国師ケ岳の谷間を上る峠で不慮の死を遂げ残された愛娘が、父の霊を弔いながらこの山中に住み父の残した琴を奏でて淋しさを紛らわしていた。金峰山には当時山岳宗教の盛んな時代で尾根の近くには七人の行者の岩場があり、蔵王権現の修験場であった。
 奥秩父に吹きすさぶ寒風に耐えいわばに座禅を組み九字の印相を結んで苦行の日々であった・春節も解け山も初夏の兆しが訪れると修験者たちの減算が始まる。ある日一人の荒山伏が修業足らずの怠け者で、渓流で水浴している事姫の美しい裸身に凡俗色情にかられ遂に暴力をもって姫を暴行してしまった。それ以来事姫は身の汚れを恥じらい父の遺品の愛琴を抱いて連日降りしきる雨で増水した渓流の深渕に身を投じてしまった。長雨が止んですうじつして笛吹川の合流点近くの河原で濁流に流され壊れ果てたことが砂礫の間に埋もれているのが見つかったが姫の遺骸はどこにも見当たらなかった。 その後せせらぎの瀬音は琴の音色に聞こえるようになり川畔の人々はこの川を誰言うとなく琴川と呼ぶようになった。遠い昔の悲哀を込めてたゆまぬ流れが今も続いている。

琴川哀歌

作詞 小林和生  作曲 水の廉太郎



唄 山川春夫

1 甲信分ける 国師岳(コブシダケ)
  谷間を下る せせらぎに
  奏でる琴の音 冴えわたる
  心根清き 琴姫の
  青春うばう 悲しさよ


2 乙女の春の 乱れ花
  傷つき悩み 身をうれい
  女のむなしさ 恥じらいて
  愛する琴を 胸に抱き
  川面に消えた 姫いずこ


3 笛吹川に 注ぎ行く
  河原の渕に 琴うもれ
  琴女のむくろは 影もなく
  流れは琴の 音に似て
  忍べば哀れ 琴川よ