「差し出の磯」は山梨市の笛吹川右岸に突出した丘陵と断がい(崖)をさします。
 丘稜の高さは20mほどだが、奇岩絶壁が古樹鬱葱として茂り、東方はるかに塩の山、その北に恵林寺の山が連なっている。

「古今和歌集」賀部第3歌の「志ほの山さしでの磯にすむ千鳥君が御代をば八千代とぞなく」は、吉田検校作曲になる「千鳥の曲」の前うたによって広く全国に紹介された。しかし「差出」の地名が千葉や能登半島などにもあり、歌の意が海岸のような印象を与えるところから、この歌は甲斐の差出を歌ったものではない、とする説が強かった。
 ところがこの歌は古代の甲斐をめぐり、延命長寿の思想に関連づけられて、ツル(鶴)の米がゆ(七彦粥=ななひこがゆ)にその発想があり、都留(鶴=つる)郡と菊花山、七彦粥は相互関係をもって賀の歌にしばしばよみこまれてきました。
 七彦粥を産した七日子神社は同じ山梨市にあって塩の山にも近く、差出の磯はその関連から歌名所としてもてはやされてきた。
 「万力公園・万葉の森と差出の磯 山梨」が2001(平成13)年、山梨百選に選定されている。

山梨市市民歌

作詩 安藤壮一 作曲 石川利夫 
   

唄 林 伊佐緒 
  

  1 むらさき匂う 朝雲に
  笛吹川も 光りつつ
  瀬音きよらに さみどりの
  松風ひたし ゆくとこ
  おお山梨は あこがれと
  希望の虹の 立つ都市(まち)よ

2 伸びゆくいらか はてもなく
  自然の恵み 讃えつつ
  ちまた湧きたつ 生産に
  鉄路のひびき 澄むところ
  おお山梨は 産業と
  文化の花の 咲く都市よ

3 絵巻をうたう 万力の
  水上はるか 展けつつ
  差出の磯に 富士映えて
  千鳥も夢を 呼ぶところ
  おお山梨は 観光と
  平和の友の 寄る都市よ

4 山梨岡の 宮柱
  由緒も深く 仰ぎつつ

  遠つ父祖(みおや)の 名にかけて   
  力と声の あるところ

  おお山梨は 新生の
  歴史の鐘の 鳴る都市よ

現在は磯の斜面の一部が道路を通すため切り取られていて、当時をしのぶ姿を見られないのが残念です。

差出の磯正面

万力公園・万葉の森入り口